気づけば上野駅から電車に乗り込んでいた。
窓の外を流れる景色はモノクロシネマを観ているようだ。
全てに色は無く、ただ時の流れに逆行する感じしか覚えない。
「書生さんかい?」
おじいさんが私にそう問いかけた。
「・・・」
書生って 明治時代じゃあるまいし(笑)
私は関わらないようにモノクロシネマを観続けた。
「雨もいいもんだね」
おじいさんの言葉で雨が降っている事にはじめて気付いた。
電車が停車した。
「わしはこの駅で下りるよ」
と言いながら、私にハンカチを手渡し下りていった。
終点で降りる。
雨は止んでいた。
色鮮やかなシネマの続きが目の前に広がる。
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